二本松有機農業研究会・ドイツスタディーツアー報告会

≪二本松有機農業研究会 近藤恵(こんどうけい)の報告≫ 簡略化して転載します。
ドイツツアー参加への経緯
 2011年の原発事故で農業の存在を根幹から揺るがす大きな痛手を被りました。事故をきっかけとしてNPO法人APLAと出会い、共に全6回の「福島百年未来塾」を開催し学びを深めてきました。研究会内に「エネルギー部会」を立上げ、国内5カ所の再生可能エネルギー事業所を視察。さらにドイツの再生可能エネルギー事業に詳しい専門家の講演会も開催。
 未だ所属農家の収入が3.11前の66%に留まっている厳しい状況の中、農家が関与できる自然エネルギーの創出から自らの所得に寄与するのではないかとの切実な願いから、本気になって取り組もうという機運が高まり、本ツアーの参加となりました。
*APLA:「Alternative People’s Linkage in Asia=人びとが創るもうひとつのアジア」の頭文字をとったもの。日本を含むアジア各地で「農を軸にした地域自立」をめざす人びとどうしが出会い、経験を分かちあい、協働する場をつくり出すことを目的に、2008年に特定非営利活動法人として発足。
ツアー概要 −暗さを大事にするドイツ−
【視察先】
廃炉が決定しているドイツ最大の原発
・バイオガスプラント2か所
・エネルギー協同組合のリーダーM・ディースティル氏によるレクチャー
・ピオホテル(オーガニックホテル)宿泊およびオーナーによるレクチャー
・伝統品種豚・有機豚生産販売組合
・町づくり協同組合
 南ドイツバイエルン州〜バーデン・ビュルンベルグ州にかけてのバスでの移動中、いたるところに太陽光パネルが広大な敷地に敷設され、家の屋根にも、6〜7割ほどパネルがあがっている。風車、バイオガスも散見され、エネルギー生産が分散化されている様子がよくわかる。
 広大な農用地にパネルが敷き詰められる様も、農業者としては複雑な思い。バイオガスもサイレージ(飼料作物を発酵させたもの)なので牛に食べさせればいいのにと思ったほど。
 しかし、原発をやめるということは、このように変わらざるをえないのだという覚悟にもなった。 同様にインパクトがあったのは、エネルギー協同組合のレクチャー。設計思想、金融思想が大変しっかりしており、大手企業に負けないくらい、いや、別の土俵(オルタナティブ)での事業計画を提案している様子が印象的。
 オーガニックホテルにも2泊したが、ここのオーナーのレクチャーにも刺激を受けた。2012年にオーガニックホテルに転換したが、価格を高くしても客足は落ちるどころか2割ほど増えたという。ここでも設計思想がブレないことによって事業に魅力が出ている。
 ミュンヘン空港から宿泊拠点のミュンヘン中央駅まではバスで40分ぐらいだが、その間にネオンはなく、これが都市かと思うほど暗い。また、どこの町にもコンビニは少なく、自販機もほとんどない。オーガニックホテルのオーナーもエネルギーに関する取り組みを質問すると、「私たちは創エネよりも省エネをモットーとしている」と言っていた。
ローテク・ミドルテクの見直し
 国内視察で見た薪ボイラーは効率もよく、たき口が広く使い勝手がよい。高齢者の手仕事にもなる。冬場の農家の仕事になる。火を扱う機会の少ない子供にもいい影響がある。価格も灯油ボイラーと変わらない。また、太陽熱温水器も非常に効率がよい。
 日本のエネルギー政策は熱利用の視点が欠けているという専門家もいる。
生きていてよかった−失われた「いのちの尊厳」を求めて−
 雑誌『世界』2014年3月号「いのち」を生かす、たたかいの研究:坂本義和 より引用:
 ―――「確かに「国境なき医師団」、「国境なき記者団」その他「国境なき市民」の活動も随所で活発だが、無数の小さいNPONGOやサークルに分散している。それらが直接取り組んでいるのは、飢餓・貧困、麻薬や犯罪、医療不足、被爆と被曝、ミナマタ、環境破壊、権力的抑圧、少数民族や女性の差別、その他、実に多様であろうが、そうした取り組みの根底には、平等な「いのち」の尊厳の無視への抗議と憤りが共通しているはずである。だとすれば、われわれの差し迫った課題は、「いのち」の尊厳を基軸に、直接には多彩な抵抗の声をあげながら、多様な共同組織ではなくとも、情報の脱国家的な共有を武器に、それぞれの時点で差し迫った共同行動に集結することによって、われわれ自身のグローバル化へと自己変革していくことである。
エネルギーヴェンデの成功
 原発による集約電源開発の問題点に気付いたドイツは3.11をきっかけとして転換を始めた...翻って、日本のエネルギー政策はどうだろうか。原発はベースロード電源として使い続ける・新増設も辞さないという重要な位置づけにある。日本の変わろうという意思は弱い。
 私たち二本松有機農業研究会は変わりたい。少しずつでも。小さな範囲からでもエネルギーヴェンデ(変革・革命)を成功に導く。近日中には、エネルギーに関する事業体を発足し、また一歩前進する。皆さんと共に学びつつ、つながりが広がることを願っている。

 以下の写真は、報告会が終わった後の交流会の様子です。
【参加者】
・二本松有機農業研究会
NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク
・日本イラク医療支援ネットワーク/JIM-NET
・?オルター・トレード・ジャパン
・APLA
NPO法人 福島やさい畑〜復興プロジェクト

立っている方が二本松有機農業研究会会長の大内信一さん(無教会派)
向かって右隣りの黄色のTシャツの方がNPO法人アーユス仏教国際協力ネットワークの理事長茂田真澄住職(勝楽寺、町田市)





左端がAPLAの共同代表秋山眞兄(あきやまなおえ)さん(プロテスタント)、2番目のワイシャツ姿の方が二本松農業研究会の近藤恵(こんどうけい)さんで今回の報告会の発表者。





この小さな町二本松から大きな事が始まるかも知れない...仏教者、プロテスタントカトリックが一堂に会しています。それもまた画期的!






APLAの共同代表疋田美津子さんとオルター・トレード・ジャパンの小林和夫さん(カトリック浦和教会所属)






中腰になっている男性が大内信一さんの息子さん。大内信一さんは16代続く農家で、現在70歳。息子が後継者になったことがことのほか嬉しい!





NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワークの事務局長枝木美香さん