安田さん―何もすることがない

 多忙を理由に、老人介護施設におられる安田さんへのご聖体奉仕を他の方にお願いしておりましたが、今日久々に安田さんのところへ行ってきました。98歳になられる安田さんは今ではすっかり車椅子生活になってしまいましたが、お元気でした。2時ごろでしたので、安田さんはみんなの憩いのホールにおられ、車椅子でまどろんでおられました。
 私がそっとかがんで安田さんの顔を覗き込んで静かに声をかけると、目を開け、私だと分かるとすぐににこやかな笑顔になって「ああ、どうもすみません。忙しいのに来て頂いて」と、とても謙虚な安田さんはいつも恐縮するのです。そして、ご聖体を拝領するために「部屋に行きましょう」と言うと、安田さんは車椅子を手で動かすのではなく、車椅子に乗ったままの状態でご自分の足で歩いて前進していきました。少しでも動くなら、衰えないように使いたいという安田さんの努力です。
 ご聖体拝領の後、お天気の話や教会のみなさんの様子などを話すと、あとはお互いに話題がなくなってしまいます。安田さんは、日がな一日、何もせず、食べて寝ることしかできなくなったとおっしゃいます。教会にも行きたいが、その時になると気力が湧いてこないと残念そうにおっしゃいます。
 震災の避難者の方々もそうですが、避難生活では何もすることがないため、高齢者は身体を使うチャンスもなく、筋力が著しく衰えてしまっています。安田さんも独立した娘さんご夫婦は東京におられるので、高齢となった今では施設に入るしかありません。そして、身の回りの世話をすべてして頂ける代償として、ご自分ですることがないため、筋力が衰え歩けなくなってしまうのです。安田さんももし、ご自宅で暮らすことができたなら、今もしゃきっとしてもっとお元気だったかも知れない、などと勝手な想像をしてしまいました。
 何もすることがない...仮設住宅のお年寄りの方もおっしゃていました...一日が長くてねぇ、と。
 失業者ばかりでなく、お年寄りも何らかの働く場があるといいのですが...