ふるさと〜農民の思い

震災に見舞われた福島県人のもう一つの思いを知って頂きたいと思います。
放射能問題については専門家の間でも意見が二分しており、素人の私たちはどちらかにつくという立場を取って、それぞれが意見をお持ちです。
 この問題は、人それぞれ「観点」が異なります。福島県人にとってはもう一つの立場があり、それは「この放射能と共存していくしかない」という立場です。

 福島県人にとっては、それでも自分の愛する故郷を守って、ここで「生きていくしかない、いや、ここで生きたい」のです。他人事ならば、簡単に危険だからそこを離れろ!と言えるでしょう。しかし、人間は「ふるさと」をそう簡単に捨てることができるものではありません。中国の残留孤児が里親のもとで幸せに暮らしているのに、日本への思いが断ち切れない現実はテレビで皆さんも何度もご覧になったと思います。また、長年連れ添った伴侶が病気になったからと言って見捨てたりするでしょうか。その苦しみを共に担っていこうと覚悟するでしょう。なぜなら、愛があるからです。
 農家の方々は作物を作ることが生きがいであり、おいしくできた新鮮な自慢の野菜をみなさんに食べて頂くことが喜びなのです。土地も作物を作り続けなければダメになってしまいます。農家の方は普通の生活を取り戻したいのです。先祖代々守ってきた土地を今後も守り続けたいのです。そのための戦いだと思って下さい。今、作ることを止めたら、福島県の土地は死んでしまいます。先日南相馬方面に行ってきましたが、無人となった飯館村の田畑は雑草が伸び、荒れ放題でした...。これが私たちの故郷の風景なのです。福島を自分たちで守らなければ誰が守るでしょうか。仮設住宅に避難している方々も帰れるものなら明日と言わず今すぐにでも帰るつもりでいます。若い方は別として、誰もふるさとを捨てたいとは望んでいません。
 とは言え、2年もすれば福島の農家はほとんどが離農を余儀なくされているだろう、という見方もあります。それでも今はまだ諦めたくない...のです。
 東電や国から賠償金をもらえばいいと考える方もあるようですが、そういうことともまた次元の違う話です。

 さらに言えば、農業の問題はひいては日本人の食の問題にも関わってくることです。日本の農業が縮小してますます海外に頼るようになってしまえば、日本という国も危なくなってきます。「食」を他者にコントロールされてしまうことは支配されてしまうことにもつながります。そういう意味でも、どうぞ皆様も福島の農業を守る道を共に考えてください。いい知恵があったら、是非教えてください、お願い致します。