『小さい者とともに』ジャン・バニエ(1)

 現代人は人との心の交流が希薄になっていると言われて久しいですが、そのことを見直すに当たっては現代の聖人とも言われるジャン・バニエの言葉の中に光を見いだすことができるかもしれません。ご紹介したいと思います。
 ジャン・バニエは1928年カナダで生まれ、1964年に最初のラルシュ・コミュニティをフランスで創立したカトリック信徒です。今日、世界中に広がるラルシュ・コミュニティは知的ハンディを持つ人や、生活を分かちにやってくる人たちに家庭を提供しています。ジャン・バニエは国際的な講師、説教者として知られており、多数の著作があります。
 『ラルシュのこころ』 ―小さい者とともに、神に生かされる日々―
                                ジャン・バニエ(Jean Vanier)
【日本のみなさんへ】
・私たちが生活する産業国では、しばしば、成功、仕事、効率、金銭のみに価値が置かれています。知的ハンディを持つ人はとても弱いのですが、心・絆・愛という別の面を現すことにより、人間存在の深い面を見いだせるようにと、手伝ってくれるのです。
【はじめに】
・ハンディを持つ人たちの愛の力は、私たちの人間らしさを気づかせてくれます。
・ラルシュはトマ・フィリプ神父を通して聖霊によって起こされました。人間の本質は知識にあるのではなく愛にあることを、私たちの時代の人たちに知らせるためです。
・ラルシュのいくつかのコミュニティーは異なった宗教の中で生きています。インドでは、私たちのコミュニティーキリスト教ヒンズー教イスラム教徒たちが集まっています。小さい人、苦しむ人、見捨てられた人たちは、神がおられるしるしだと、ガンジーは言っています。貧しい人に近づき、その人たちと深いかかわりが生まれ、それが「契り」と呼べるまで育つと、神に近づくことになります。
・貧しい人とは、何かを必要とし、かつ必要としていることを認めていて、助けを求めている人たちのことです。私たちは誰でも傷つきやすく、みな、限界を持ち、自分なりのハンディを持っています。私たちが自分の弱さを認めることができれば、助けを求めることができ、一緒に働くことができます。
・弱い人は、強い人が必要ですが、しかし強い人もまた弱い人を必要としていることがラルシュにおいて分かってきました。