安田さんの安否

今日の環境放射能測定値測定結果
二本松市役所 8.66 マイクロシーベルト (3月23日09:30〜11:30) 
          6.75 マイクロシーベルト (3月23日13:30〜15:40)
今日は朝から14:00頃まで冬に戻ったかのようにずっと雪が降っていました。そのために放射能の量も多くなり、止むと少なくなるようです。

 車に給油できたので、ずっと気がかりだった老人介護施設に入所されている安田さん(98歳)のところに行ってきました。玄関でスリッパに履き替えて中に入ろうとすると、電気が消えて暗いのです。「あれ、今日はお休みかな?」と思いましたが、節電を実行されていたのでした。介護士さんに地震の時のことを伺うと皆さん大丈夫だったとのことで安心しました。いわき市に住んでいた私の伯父(90歳)は地震の翌日にショックで亡くなりましたので、安田さんのことがずっと気がかりでした。
 安田さんはホールに車椅子に座っていつものようにテレビの前におられました。白髪がいつもよりきれいに輝いていましたので、伺うとお風呂から上がったばかりでなんですと、ほほ笑んでお応えになりました。お風呂は希望すれば毎日でも入られますが、私は二日に一回ぐらいです、ということでした。ホールの皆さんはおやつを召し上がっておられます。安田さんに地震は大丈夫でしたかと伺うと、すでに過去のことで覚えてはおられないようなので、それ以上地震には触れないことにしました。
 しばらくそんな雑談をしてから、ご聖体をお持ちしましたが頂きますか、と伺うと「はい、頂きます。忙しいのにいつもすみません。」と紳士の安田さんは若輩の私に気を遣われます。いつもならお部屋に戻ってご聖体拝領をするのですが、今日はここで構いません、ということなので、そのテーブルにコルポラーレを広げて一緒にお祈りを捧げ、ご聖体を拝領して頂きました。
 震災の騒動もここにはありません。静かに時は流れていきます。安田さんにご不自由なことはありませんか、と伺うと、ここにいる限り何も不自由なことはありません。全部やってくださいますから、と感謝を忘れません。本当は自由に外出したいはずなのですが。
 安田さんが退院して戻ってきてからおられるこの病棟への出入り口のドアには鍵がかかっています。私は訪問者が無断で出入りしないようにかと思っていたのですが、聞くと入所しておられる方が外に出ないように、なのだそうです。何か複雑な気持ちになります。安田さんはいつものように今日も車椅子から立ち上がって、ドアの内側から私を見送ってくださいました。


ささやかな慰めに

『メノラー(燭台)の思い出』
ユダヤ教の音楽です。
哀調を帯びたメロディーです。震災で亡くなられた方々の霊魂のために捧げます。